ドミニカ代表の分析(マルティネス投手編)

今回は、WBCドミニカ代表のエースであるカルロス・マルティネス投手(以下マルティネス投手)を分析します。

 

前回大会に引き続き圧倒的強さを見せつけているドミニカは、優勝を目指す日本代表にとって一番のライバルといえます。エースであるマルティネス投手を打ち崩せるかどうかは世界一奪回に向け大きなポイントとなるでしょう。

マルティネス投手のプロフィール

ドミニカ共和国・コリナス・デル・スール出身のメジャーリーガー。25歳の若き速球投手です。現在はMLBのセントルイス・カージナルスに所属しています。WBC2017年では初戦の先発を任されるなど、若くしてドミニカ代表のエース格として期待されています。

投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)

高いゴロ割合で打者を圧倒!

マルティネス投手の成績の中で、ひと際目を引くのがゴロ割合です。4シーム、2シーム、チェンジアップはMLB平均を大きく上回るゴロ割合となっています。

また、同3球種はライナー割合でMLB平均より低い成績を残しています。とらえるのが難しく、ゴロになりやすいボールがマルティネス投手の武器であると読み取ることが出来ます。【表1】

表1 各球種のスイング割合、空振り割合と打球の種類
球種スイング割合
(Sw Rate)
空振り割合
(Whf/Sw)
ゴロ割合
(GB/BIP)
ライナー割合
(LD/BIP)
フライ割合
(FB/BIP)
4シーム46%
(46%)
18%
(19%)
49%
(36%)
16%
(28%)
26%
(27%)
2シーム43%
(44%)
11%
(13%)
69%
(56%)
19%
(24%)
10%
(16%)
チェンジアップ59%
(54%)
30%
(33%)
64%
(50%)
22%
(24%)
12%
(20%)
カーブ42%
(40%)
39%
(32%)
41%
(51%)
25%
(24%)
28%
(20%)

カッコ内はMLB平均

球種毎の投球割合と球速差

メジャー屈指の球速!!

平均球速はすべての球種でMLB平均を上回っていることがわかります。特に平均球速はスターターとしては驚異的なスピードです。

また、投球割合をみると、各球種をバランス良く投球していることも特徴です。【表2、3】

表2 対右打者における各球種の球速
球種平均速度(km/h)平均速度(%)最高速度(km/h)投球割合(%)
4シーム156
(149)
100
(100)
162
(154)
21
2シーム154
(149)
98
(100)
160
(153)
36
チェンジアップ141
(137)
90
(92)
158
(144)
10
カーブ138
(125)
88
(84)
156
(135)
33

カッコ内はMLB平均

表3 対左打者における各球種の球速
球種平均速度(km/h)平均速度(%)最高速度(km/h)投球割合(%)
4シーム156
(149)
100
(100)
163
(154)
33
2シーム153
(149)
98
(100)
160
(153)
25
チェンジアップ140
(137)
90
(92)
148
(144)
27
カーブ136
(125)
87
(84)
144
(135)
15

カッコ内はMLB平均

球種毎の変化量

ゴロ量産の秘密は変化量にあり!高速で垂れる速球!?

各球種の変化量をみると、マルティネス投手の大きな武器である高いゴロ割合を生み出す秘密が明らかになります。では球種ごとに細かくみていきます。【図1、2】【表4、5】

図1 対右打者へのボールの変化量
図2 対左打者へのボールの変化量

※薄色は各球種のMLB平均

4シーム

MLB平均より、ホップ成分が6cm小さく、シュート成分が6cm大きなボールです。すなわち小さくシュートし沈むボールとなっています。非常に高速でありながら、空振りだけでなくゴロを打ち取りやすいボールとなっています。

2シーム

MLB平均より、ホップ成分が14cm小さく、シュート成分が7cm大きなボールとなっています。2シームは高速かつ非常に大きく沈むボールであることがわかり、高いゴロ割合を生み出すマルティネス投手の最大の武器といえます。

チェンジアップ

MLB平均より、15cmも大きく沈んでいることがわかります。横の変化も9cm大きく、変化の大きなボールといえます。

カーブ

他の3球種と違い、平均よりも球速が早く、縦の変化が小さい特徴があります。

表4 対右打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2149
(2253)
39
(45)
29
(23)
2シーム2039
(2159)
20
(34)
45
38
チェンジアップ2015
(1787)
11
(26)
43
(34)
カーブ2150
(2413)
3
(-15)
-18
(-17)

カッコ内はMLB平均

表5 対左打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム21190
(2253)
38
(45)
29
(23)
2シーム2054
(2159)
22
(34)
44
38
チェンジアップ2009
(1787)
11
(26)
43
(34)
カーブ2136
(2413)
0
(-15)
-19
(-17)

カッコ内はMLB平均

球種毎のリリースポイント

低いリリースとエクステンション短さ。ボールの見え方に違和感。

【表6,7】のリリース位置をみると、特筆すべきフォームの特徴が二つあります。リリースの低さとエクステンションの短さです。特にエクステンションの短さはマルティネス投手の武器の一つでもあります。

エクステンションが短いということは、打者の予測よりも早くにボールがリリースされることになります。

一般的にエクステンションが短い投手は、リリース高が高くなる傾向があるのですが、マルティネス投手はそうではありません。身長が183cmとメジャーリーグの中では小柄であることが、短いエクステンションに影響しているかも知れません。

 

マルティネス投手の球は見慣れない軌道で飛翔してくるので、打者は違和感を覚えるでしょう。

表6 対右打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム164
(180)
36
(50)
175
(188)
2シーム160
(178)
41
(54)
171
(187)
チェンジアップ164
(179)
40
(54)
171
(188)
カーブ165
(187)
41
(53)
159
(173)

カッコ内はMLB平均

表7 対左打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム165
(180)
37
(50)
174
(188)
2シーム165
(178)
43
(54)
168
(187)
チェンジアップ165
(179)
41
(54)
171
(188)
カーブ169
(187)
42
(53)
155
(173)

カッコ内はMLB平均

球種毎のカウントとゾーンからみる特徴

ストライクゾーンでどんどん勝負!若さ溢れる投球に注目!

カウント別の投球割合とゾーン別の投球割合をみてみます。マルティネス投手はすべての球種においてストライクゾーンに多く投球されていることがわかります。

ボールの威力に任せて思い切って勝負するといった若さ溢れる投球を感じます。球種ごとに細かくみていきます。

4シーム

あまり制球力が高いとはいえず、ストライクゾーンや、甘い真ん中周辺への投球が多いことがわかります。
しかし球速は非常に速く、追い込んだ後はさらに球速を上げている意図も感じることが出来ます。
また左打者において3-0のカウントではかなり高い確率で投球される傾向があります。【表8~11、図3、4】

表8 対右打者へのカウント別投球割合
表9 対左打者へのカウント別投球割合
表10 対右打者へのカウント別球速
表11 対左打者へのカウント別球速
図3 対左打者へのボールの投球割合
図4 対右打者へのボールの投球割合
2シーム

早いカウントでの投球が中心です。また、低めを意識して投球していることがわかります。ストライクゾーンへの投球は多いものの、高めのストライクゾーンにはほとんど投球されていません。早いカウントでゴロで打ち取ることで、投球数を節約しようとする意図が見て取れます。【表12~15、図5、6】

表12 対右打者へのカウント別投球割合
表13 対左打者へのカウント別投球割合
表14 対右打者へのカウント別球速
表15 対左打者へのカウント別球速
図5 対左打者へのボールの投球割合
図6 対右打者へのボールの投球割合
チェンジアップ

左打者に対して多く投球しています。左打者に対しては外角低めによく制球されています。右打者に対しては投球割合こそ低いものの、甘いコースに投球されることも多いことがわかります。【表16~19、図7、8】

表16 対右打者へのカウント別投球割合
表17 対左打者へのカウント別投球割合
表18 対右打者へのカウント別球速
表19 対左打者へのカウント別球速
図7 対左打者へのボールの投球割合
図8 対右打者へのボールの投球割合
カーブ

追い込んだ後の投球が中心で、早いカウントではあまり投球していません。右打者の外角低めに多く投球していますが、時折高めのコースに投球してしまうこともあるようです。左打者に対しては更に顕著で、甘いコースや高めのボールゾーンに投球されることも少なくありません。

表20 対右打者へのカウント別投球割合
表21 対左打者へのカウント別投球割合
表22 対右打者へのカウント別球速
表23 対左打者へのカウント別球速
図9 対左打者へのボールの投球割合
図10 対右打者へのボールの投球割合

マルティネス投手への対策

野球大国を背負う超一流のボール!付け入るスキは制球のみ!?

ここまでマルティネス投手の分析を行ってきましたが、投球されるボールはメジャー屈指といえます。球速は先発投手としては驚異的ともいえるスピードです。

加えて高速に沈む変化をみせるマルティネス投手のボールを打ち返せる打者はメジャーでもそう多くないでしょう。付け入るスキがあるとすると制球力しかないといっても過言ではありません。

 

マルティネス投手は全体的にストライクゾーンで勝負することが多い投手です。それだけでなく真ん中よりの甘いコースに投球される場合も少なくありません。狙い球を絞って甘いコースを逃さず打ち返すことがポイントになるでしょう。

 

また、早いカウントでは4シームと2シームを中心に投球していますし、追い込んだ後はカーブが増えています。カーブはマルティネス投手の球種で唯一ゴロ割合が低く、一番打ち返しやすい球種です。またカーブは左打者に対して甘いゾーンへの投球も多く見受けられ、長打も狙えるボールでしょう。

追い込まれるまでただ待つのではなく、真ん中周辺の速いボールを待ち、追い込まれたらカーブを狙うことが得策ではないでしょうか。

4シームと2シームは高速に沈むのでゴロを打たされないよう打者はややアッパースイング気味にバットを操作する意識が必要です。甘いボールを長打に出来る左打者には期待したいところです!

まとめ:マルティネス投手攻略法
早いカウントでは真ん中周辺の速球待ち
高速で沈むボールにはアッパースイング気味の意識が必要。
追い込まれたらカーブを長打狙い!

日本代表の世界一奪回には必ず立ちはだかる相手です。日本のクレバーさで対抗しましょう!!

※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)

Baseball Geeks編集部

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