イスラエル代表の分析(マーキー投手編)

今回は、WBCイスラエル代表のエースであるジェイソン・マーキー投手(以下マーキー投手)を分析します。

イスラエルは世界ランク41位ながら、強豪国を打ち破り第2ラウンド進出を決めました。もはや今大会の台風の目となっています。

マーキー投手のプロフィール

メジャーリーグでの登板は2015年が最後で、現在はフリーエージェントとなっています。今大会では韓国戦に先発し、第二ラウンド進出に大きく貢献しています。なお、本記事では2015年データをもとに分析していきます。

アメリカ合衆国・ニューヨーク州マナセット出身の元メジャーリーガー。メジャーリーグ歴代124勝をあげている右腕です。

衰えを高い投球術でカバー!

マーキー投手は現在38歳のベテラン投手です。【表1】をみると投球の中心である2シームにおいて空振り割合がメジャーリーグ平均を下回っており、ボールの威力は衰えをみせ始めていることがわかります。

しかしながら、打ち取り方はほぼMLB平均と同様の数値をみせており、高い投球術でカバーしていることが読み取ることが出来ます。

表1 各球種のスウィング割合、空振り割合と打球の種類
球種スイング割合
(Sw Rate)
空振り割合
(Whf/Sw)
ゴロ割合
(GB/BIP)
ライナー割合
(LD/BIP)
フライ割合
(FB/BIP)
2シーム38%
(44%)
10%
(13%)
57%
(56%)
26%
(24%)
16%
(16%)
スライダー52%
(49%)
30%
(36%)
48%
(46%)
26%
(25%)
23%
(21%)
チェンジアップ59%
(54%)
36%
(33%)
23%
(50%)
43%
(24%)
23%
(20%)

カッコ内はMLB平均

球種の特徴

少ない球種も緩急自在!?球種内の球速差に注目!!

【表2、3】をみるとマーキー投手の持ち球は3球種と先発投手としては多くはありません。また、投球割合にも特徴があります。

■対右打者
2シームとスライダーで約90%

■対左打者
2シームとチェンジアップで90%以上

 

左右の打者ともに投球の軸となっている2シームですが、球速は142キロとMLB平均よりも遅く、決して球が速い投手とは言えません。しかし、マーキー投手の持ち味といえるポイントが2つあります。

表2 対右打者における各球種の球速
球種平均球速(km/h)平均球速(%)最高球速(km/h)投球割合(%)
2シーム142
(149)
100
(100)
150
(154)
57
スライダー134
(136)
94
(91)
152
(144)
32
チェンジアップ128
(137)
91
(92)
151
(144)
11

カッコ内はMLB平均

表3 対左打者における各球種の球速
球種 平均球速(km/h)平均球速(%)最高球速(km/h)投球割合(%)
2シーム142
(149)
100
(100)
151
(154)
61
スライダー133
(136)
94
(91)
144
(144)
8
チェンジアップ128
(137)
90
(92)
145
(144)
30

カッコ内はMLB平均

■各球種の平均球速と最高球速の差
速球はMLB平均よりも7km/hほど遅いのですが、最高球速はMLB平均よりも4km/hしか遅くありません。

つまり、マーキー投手は、平均球速に比べて最高球速が大きいという特徴があるということです。同じ球種なのにもかかわらず、球速を変化させることができるため、打者はタイミングを合わせにくい投手といえるでしょう。

■高速な変化球
マーキー投手のスライダーは、平均球速(%)が94%と速く、2シームの球速に近い球速で変化させていることがわかります。

高速な変化球は、打者は「動くボール」と認識することになります。高速な球速帯で、打者を翻弄するのがマーキー投手の特徴でしょう。

ボールの変化量の特徴

オーバーハンドからまるでサイドハンドのボール!マーキー投手最大の特徴!

球種毎の変化量をみると、まるでサイドハンドから投球されているように、2シームとスライダーのホップ成分が同じという球質となっています【図1、2】。

図1 対右打者へのボールの変化量
図2 対左打者へのボールの変化量

※薄色は各球種のMLB平均

次に球種毎にみていきます【表4、5】。

2シーム

MLB平均と比べてシュート成分が9cm大きく、ホップ成分は12cm小さくなっています(対右打者)。MLB平均より大きくシュートして大きく沈むボールとなっています。

スライダー  

横の変化は小さく、打者が感じる変化は小さいボールとなっていますが、ホップ成分が2シームと同じであることが大きな武器であり特徴です。

チェンジアップ

MLB平均と比べホップ成分が小さく、大きく沈むボールといえます。上記の2球種が同じホップ成分であるため、打者はより大きな落差を感じる可能性があります。

表4 対右打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
2シーム1787
(2159)
22
(34)
47
(38)
スライダー1977
(2264)
21
(13)
4
(-5)
チェンジアップ1249
(1787)
13
(26)
30
(34)

カッコ内はMLB平均

表5 対左打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
2シーム1781
(2159)
21
(34)
46
(38)
スライダー1879
(2264)
22
(13)
3
(-5)
チェンジアップ1240
(1787)
13
(26)
32
(34)

カッコ内はMLB平均

次にリリース高をみると平均に近い高さであることがわかります【表6、7】。

しかしながら、まるでサイドハンドから投げるようなボールを投球していることが、メジャーリーグでも活躍してきた所以の一つであると推察されます。

表6 対右打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
2シーム175
(178)
63
(54)
186
(187)
スライダー171
(181)
75
(56)
185
(178)
チェンジアップ176
(179)
58
(54)
182
(188)

カッコ内はMLB平均

表7 対左打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
2シーム174
(178)
69
(54)
186
(187)
スライダー172
(181)
79
(56)
184
(178)
チェンジアップ176
(179)
68
(54)
183
(188)

カッコ内はMLB平均

カウントとゾーンから見る特徴

生命線は低めへの制球力

すべての球種で低めに投球されており、高めのストライクゾーンに投球されることは多くありません。球種ごとにデータをみていきます。

2シーム  

基本的に低めに制球されています【図3、4】。左右打者どちらにも外角中心に投球されていることにも注目です。また、早いカウントで多く投球されており、追い込んだ後は投球割合が下がっています【表8、9】。

表8 対右打者へのカウント別投球割合
表9 対左打者へのカウント別投球割合
表10 対右打者へのカウント別球速
表11 対左打者へのカウント別球速
図3 対左打者へのボールの投球割合
図4 対右打者へのボールの投球割合
スライダー  

対右打者に関しては外角低めのボールゾーンに上手く制球されています【図6】。また追い込んだ後に多く投球されています【表12】。
対左打者に関して投球割合が少ないと同時に、ゾーンにもややばらつきがみられます【表13】【図7】。

表12 対右打者へのカウント別投球割合
表13 対3左打者へのカウント別投球割合
表14 対右打者へのカウント別球速
表15 対左打者へのカウント別球速
図5 対左打者へのボールの投球割合
図6 対右打者へのボールの投球割合
チェンジアップ  

右打者に関してはチェンジアップも低めのボールゾーンに上手く制球されています【図8】。
左打者に関しては追い込んだ後にチェンジアップを多く投球しており、早いカウントでの投球は少ないことも特徴です【表17】。

表16 対右打者へのカウント別投球割合
表17 対左打者へのカウント別投球割合
表18 対右打者へのカウント別球速
表19 対左打者へのカウント別球速
図7 対左打者へのボールの投球割合
図8 対右打者へのボールの投球割合

マーキー投手への対策

球種内での緩急には要注意!右打者の長打に期待!!

マーキー投手の大きな武器は球種内の緩急と、特徴的な球質です。チェンジアップは落差も大きく、低めに制球されるため打ち崩すのは容易でないと予想されます。

チェンジアップの投球割合が11%と少ない右打者がマーキー投手攻略のカギを握ると考えます。さらにシュート成分の大きな2シームですが、外角中心に投球されていることも右打者に追い風といえるでしょう。

緩急やコースは投球術に長けるマーキー投手相手に完全に絞り込むことは難しいでしょう。しかし空振りを奪うボールは多くないため、安易に手を出さないことが勝機につながるでしょう。

まとめ:マーキー投手攻略法
チェンジアップよりも、外角中心の2シームとスライダーを狙え!
追い込んだ後は、変化球が中心の投球。
オーバーハンドでありながら球質はサイドハンドのようなボール。緩急と特徴的な球質に注意が必要!!

※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)

Baseball Geeks編集部

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