MLBで波紋!今年のボールは飛ぶのか!?加速するフライボールレボリューション

MLBで巻き起こる「飛ぶボール」騒動

MLBでは現在「ボール」が物議を醸しています。2017年シーズンはここまで歴代最多を更新するペースで本塁打が飛び出しています。

なぜ本塁打が増えているのか。
多くの原因が考えられますが、その一つとして、全球団が統一して使用しているローリングス社製の公式球が「飛ぶボール」に変更されているではないか、という疑惑が浮上しているのです。

アメリカのメディアや、野球統計学者は独自調査をもとに飛ぶボールの指摘をしています。MLB機構はこれらの指摘に対して以下のように声明を出しています。

“ボールの質を一定にするために、マサチューセッツ州立大で、ボールが特別な仕様に達しているかについて、シーズン中とオフシーズンも定期的にテストを行い確認している。また、第三者機関にボールが最近の打撃に何らかの影響を与えているかどうかの検査も依頼している。しかし、ボールが打撃に影響を与えているという証拠は得られなかった”

田中将大、ダルビッシュ有といった日本人投手も、今シーズンは多くの本塁打を浴びており、「今年はボールが飛ぶ」と口をそろえて発言しています。

本塁打急増は本当にボールの影響なのでしょうか。
今回はbaseballsavantから取得できるトラッキングデータをもとに、15~17シーズンのデータを比較し、本塁打急増の秘密に迫っていきます。

月別打球特性の比較

【図1~3】に15~17シーズンの月別の打球特性の比較を示しています。このデータは、飛距離増加や本塁打増加は今シーズンの「突然変異」ではなく、年々少しずつ増えてきたものである可能性を示唆しています。

図1 MLB月別平均飛距離

【図1】をみると、飛距離は年々増加していることがわかります。2015年の4月と比べると、2017年の5月は3mも平均飛距離が伸びています。

なぜこんなにも突然飛距離が増加しているのでしょうか。
飛距離の内訳として、まず平均打球速度をみてみます【図2】。

図2 MLB月別平均打球速度

図2をみると、打球速度は2016年5月を境に低下傾向にあります。

ではなぜ飛距離が増加しているのでしょうか?
次に平均打球角度をみてみます【図3】。

図3 MLB月別平均打球角度

打球角度をみると、上昇傾向にあります。打球角度がどんどん上がったことにより、飛距離が増加したのではないでしょうか。

ボールの反発係数が変わったとするならば、打球速度が高まるはずです。

しかし、打球速度が低下してなお飛距離が伸びていることからも、本塁打増加の大きな要因として、打者の方策が功を奏しているといえるかもしれません。

フライボールレボリューションの効果とは

「フライボールレボリューション」この言葉は2017年米野球界を象徴するといっても過言ではありません。

Statcastの発展により、フライボールの有効性が明らかとなりました。
近年はフライボールを打つことを取り組んでいる選手も少なくなく、Baseball Geeksでもアッパースイングでフライボールを打つ選手を紹介してきました(打撃編1)

そしてこのフライボールレボリューションこそ本塁打増加の最大の原因ではないかと考えます。

【表1】の打球内訳をみると、打球の割合は少しずつ変化してきていることがわかります。ゴロやライナーを減らしてフライが増えてきているのです。

表1 MLB打球内訳
フライ内野フライライナーゴロ
2015年19.8%6.7%26.5%47.0%
2016年21.2%7.0%25.7%46.1%
2017年22.4%7.1%25.0%45.5%

そして、【表4】をみると、フライの数は大きく増加し、フライ、ライナー中の本塁打割合も高まっていることがわかります。単にフライを増やす事でなく、「効率よく」フライを長打や本塁打にする事が出来るようになったのです。

これは「打球方向」が関係している可能性があります。
baseballsavantでは、地面に対して水平の打球角度が公開されていません※。
より「引っ張り打球」が増えたことにより、本塁打が増加したのかもしれません。

※範囲指定での検索は可能です。

表2 MLBフライ、ライナー打球中の本塁打
AtBatHR数HR%
2015年6041449108.1%
2016年6043156119.3%
2017年33048334310.1%

※AtBat=打数

果たしてボールは変わったのか

ここまで、直近3シーズンの比較を行いましたが、ボールの変化を断定することは出来ませんでした。

もちろん、試合の打球には様々な要因が含まれるため、試合データだけでは測りきれず、追跡調査が必要でしょう。

更に、本塁打増加の背景には、MLB全体での意識の変化が起きているのかもしれません。

現在両リーグの本塁打王争いを繰り広げているルーキーをはじめ、「長打が打てる」打者が次々と評価されてきています。今シーズンはリーグ全体を見渡しても、長打力を測るISO(長打率-打率)が過去10年で最高の成績となっており、長打の意識が高まっています。

また、リーグ全体の三振率は過去10年で最も高い数値を記録しています。
「三振しても良いから長打を狙う」といった意識が高まっていることも要因かもしれません。

野球は今急速なスピードで進化しています。環境やトレンドが変わっていったとしても、常にベストな方法を探求し、時に柔軟に自分を変化させられる選手こそが一流選手といえるのかもしれません。

この騒動を機に、野球がさらにレベルアップすることを期待しましょう。

Baseball Geeks編集部

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