【トラックマンデータ】注目の新指標!SPVの効果とその弱点

「SPV」という言葉はご存知でしょうか。2017年オールスター第一戦では、トラックマンのデータが中継で放送されました。そこで登場したSPVという指標は、トレンドワードにランクインする等話題を呼んでいます。
今回はそのSPVについて紹介し、その効果と弱点を紹介します。

SPVとは

SPVとは、Spin rate Per Velocityの略で、スピンレートを球速で割ることで算出されます。そしてこのSPVは4シームの「質」を評価するための指標なのです。

指導現場では、「回転が多いボールはキレがある」といったように、回転数で指導することが多いでしょう。ではなぜわざわざSPVのような指標を使う必要があるのでしょうか。

【図1】は、球速とスピンレートの関係を示したグラフです。MLBではトラックマンデータが取得できるようになって以降、スピンレートの高い投手が評価される風潮にあります。
しかしながら、図1をみると、球速とスピンレートは、比例関係にあることがわかるでしょう。

図1 球速とスピンレートの関係

つまり、“球速が速い投手はスピンレートも高い”ということとなります。ですから、打者を打ち取れる理由が、球速によるものなのか、スピンレートによるものなのかを抽出することが出来ません。

スピンレートの高低で評価しても、本当の4シームの「質」を評価することはできないということです。

そこで、SPVを使うと球速の影響を取り除き、スピンレートの影響だけを抽出することが可能になるのです。SPVが高いと、球速以上に回転し、SPVが低いと球速以上に回転が少ないこととなります【図2】。

図2 SPVの高い投手と低い投手

SPVが与える打球への影響

ではSPVの高低から投手の特徴をみていきましょう。

【表1】は2016年のMLBのSPV上位ランキングです。打球の割合をみると、フライ割合(FB%)が非常に高いことがわかります。

また【表2】のSPV下位ランキングをみると、ゴロ割合(GB%)が非常に高いことがわかります。

表1 MLB2016年4シームのSPVランキング(上位)
No.NameSPVFB%GB%
1C. Young17.0651.3%18.8%
2J. Tomlin17.0139.0%36.3%
3J. Weaver16.9947.3%21.4%
4J. Peavy16.9854.8%18.3%
5J. Verlander16.9151.1%24.8%
上原浩治※17.1462.9%14.3%

2016年1000球以上投球の投手のみ※上原浩治は1000球以下

表2 MLB2016年4シームのSPVランキング(下位)
No.NameSPVFB%GB%
1W. Peralta12.4725.3%47.5%
2J. De La Rosa12.8928.3%44.9%
3M. Montgomery12.9918.2%57.8%
4P. Dean13.0929.6%44.3%
5C. Bettis13.2025.6%49.0%

2016年1000球以上投球の投手のみ

先ほど球速とスピンレートに相関関係があることは紹介しました。そして、回転速度が大きくなると、ある条件下では揚力が大きくなります(この条件は後述します)。

打者はおそらくその球速の平均的な軌道を予測して打席に立っています。ですので、SPVが高い投手の4シームは、打者が予測した軌道よりも揚力を受けホップしているように感じ、フライが多くなります。また、逆にSPVが低い投手の4シームは、打者が予測した軌道よりも揚力を受けずに沈んでいるように感じ、ゴロが増えます。

このように4シームの「質」を探ることが出来るのがSPVなのです。

SPVの弱点

ではSPVは万能なのでしょうか。残念ながらそうではありません。その理由を紹介します。

先ほど回転速度が大きくなると、ある条件下では揚力が大きくなることを紹介しました。この条件がその理由の一つです。

回転するボールは揚力を受け、マグヌス効果により変化します。その観点からみると、4シームの回転数が増えると揚力が大きくなり、よりホップするようになります。しかし、それは「回転軸がきれいなバックスピン」となっていることが条件となるのです。

ここでいうバックスピンとは、回転軸が進行方向と垂直にあるボールの事です。ピッチャープレートと平行といえばイメージが湧くかもしれません。ちなみにジャイロ回転のボールは回転軸が進行方向と平行となります。

研究報告によると,ボールの変化には回転軸の方向が大きく影響しています。ジャイロ回転となった場合、揚力を受けないので、いくら回転してもボールはホップしません。つまりSPVが高くとも、ジャイロ回転に近い4シームはホップしないということとなります(Jinji and Sakurai※1)。

オールスター中継でも、サイドスロー投手のSPVが話題となりました。サイドスローはジャイロ回転に近づきやすくなるため、SPVが高くとも、ホップする4シームではなかったかもしれません。

ボール変化量で評価する

SPVは、4シームの「質」を探ることが出来る一方で、評価しきれないボールもあることがわかりました。そこで、ボール変化量というデータを評価すべきだと考えます。

ボール変化量は、トラックマンで取得できるデータで、揚力を受けたボールが具体的に何cm変化したかを探ることが出来ます。

このデータですが、解釈するのが少々難解となっています。しかし直接どんな変化をしたかわかる点や、他の球種でも使えることから、ボール変化量のデータは非常に有用なのです。

ボール変化量の解釈は(メジャーリーグで投球される球質の特徴)で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

Baseball Geeksの投手分析でもボール変化量を最も重要視しています。今後このようなデータがより広がりを見せ、「この投手の4シームは〇〇cmホップした!」というような野球談議が交わされる日を楽しみにしています。

引用
※1 Jinji T. and Sakurai S. (2006): Direction of Spin Axis and Spin Rate of the Pitched Baseball. Sports Biomechanics 5 (2): 197-214.

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