上原浩治投手2016シーズン分析

日本人メジャーリーガー編第3弾は、上原浩治投手(以下上原投手)を特集します。ワールドチャンピオンのカブスに移籍した今シーズンも、勝利に欠かせないセットアッパーとして大きく期待されています。

まず今回は上原投手の2016年シーズンの活躍の秘密に迫ります。

上原投手のプロフィール

大阪府寝屋川市出身のメジャーリーガー。大阪体育大学卒業後、読売ジャイアンツに入団。数々のタイトルを獲得した後、MLBに挑戦。

今シーズンからはMLBのシカゴ・カブスに所属しています。メジャー9年目を迎えた球界を代表するリリーバーです。

抜群のコマンド力と高い奪三振率はメジャーリーグでも群を抜いており、前所属のボストン・レッドソックスではクローザーとして2013年の世界一に大きく貢献しました。

各球種の投球結果

フライボールピッチャー!

【表1】をみると、MLB平均と比べて4シームとスプリットの空振り割合が高いことがわかります。この2球種は、毎年高い奪三振率を残している上原投手の投球の軸となっています。

また、全球種でフライ割合が平均よりも高くなっています。特に4シームは驚異的な成績となっています。フライ中心に打ち取るフライボールピッチャーであるといえます。

表1 各球種のスイング割合、空振り割合と打球の種類
球種スイング割合 (Sw Rate)空振り割合 (Who/Sw)ゴロ割合 (GB/BIP)ライナー割合 (LD/BIP)フライ割合 (FB/BIP)
4シーム52%
(46%)
23%
(19%)
18%
(36%)
20%
(28%)
45%
(27%)
カットボール39%
(50%)
33%
(23%)
14%
(46%)
29%
(25%)
29%
(22%)
スプリット57%
(53%)
38%
(34%)
30%
(52%)
23%
(24%)
30%
(19%)

カッコ内はMLB平均

各球種の球速と投球割合

球速以外に打たれないポイント!

【表2、3】をみると球種が少なく、投球のほとんどが4シームとスプリットで構成されています。上原投手は高い奪三振率を誇り、4シームとスプリットはどちらも高い空振り割合となっています。

しかし、平均球速をみるとすべての球種でMLB平均を下回っています。つまり、上原投手は球速以外に打たれないポイントがあるといえます。

表2 対右打者における各球種の球速
球種平均球速(km/h)平均球速(%)最高球速(km/h)投球割合(%)
4シーム141
(149)
100
(100)
144
(154)
37
2シーム140
(149)
100
(100)
143
(153)
11
カットボール133
(143)
95
(96)
137
(149)
8
スプリット128
(138)
91
(92)
138
(144)
44

カッコ内はMLB平均

表3 対左打者における各球種の球速
球種平均球速(km/h)平均球速(%)最高球速(km/h)投球割合(%)
4シーム140
(149)
100
(100)
144
(154)
44
2シーム140
(149)
100
(100)
143
(153)
9
スプリット127
(138)
90
(92)
139
(144)
47

カッコ内はMLB平均

各球種の変化量

大きなホップ成分で空振り量産!

ボールの変化量に上原投手の武器をみる事ができます。球速が遅くても打たれないポイントのひとつです。【図1、2】球種ごとに細かくみていきます。【表4、5】

図1 対右打者へのボールの変化量
図2 対左打者へのボールの変化量

※薄色は各球種のMLB平均

4シーム

MLB平均を大きく上回るホップ成分です。高いスピンレートが大きなホップ成分の要因となっているかもしれません。その軌道は打者の予測を大きく上回るため空振りを量産していると推察できます。また、平均よりややシュートしていることも特徴です。

2シーム

シュート成分こそ平均的ですが、ホップ成分が非常に大きなボールです。

※上原投手自身は2シームは投球していないと語っていますが、Baseball Savantではシュート成分の大きな4シームが2シーム判定されている可能性があります。

カットボール

右打者にのみ投球しています。変化量は平均に近いボールです。

スプリット

上原投手の代名詞ともいえるボールですが、意外にもMLB平均よりも落ちていません。ただ、シュート成分は大きくなっています。

落差こそ大きくないものの、4シームが非常に伸びるため、相対的に落差を感じ、打者は次々と空振りしてしまいます。

表4 対右打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2401
(2253)
55
(45)
29
(23)
2シーム2414
(2159)
48
(34)
39
(38)
カットボール2258
(2275)
34
(32)
-1
(2)
スプリット1735
(1613)
25
(20)
35
(29)

カッコ内はMLB平均

表5 対左打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2414
(2253)
55
(45)
29
(23)
2シーム2395
(2159)
49
(34)
39
(38)
スプリット1754
(1613)
24
(20)
36
(29)

カッコ内はMLB平均

上原投手の特徴として全体的にホップ成分が大きいことがわかります。予測よりボールが上に到達するため、打者は空振りしてしまったり、フライを打ち上げてしまったりするのでしょう。

球速こそ低いものの、このホップ成分は大きな武器といえるでしょう。

各球種の投球フォームの特徴

驚異的なエクステンション!

投球フォームにも大きな特徴があります。1番の特徴はエクステンションの短さです。つまり、リリースが早いということです。

上原投手は非常に投球間のテンポが速いことで知られています。加えてエクステンションが短いため、フォームも非常にコンパクトであるといえます。

打者からすると、タイミングを取るのが難しく、ボールの出てくる角度も違和感があるかもしれません。ボールの変化量に続いて、投球フォームも上原投手の武器のひとつです。【表6、7】

また、プレートの左端(一塁寄)から投球しているため、リリース横が小さくなっています。ただでさえホップ成分の大きい4シームですが、打者はより浮き上がる感覚を持つかもしれません。

表6 対右打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム181
(180)
35
(50)
171
(188)
2シーム182
(178)
38
(54)
170
(187)
カットボール177
(181)
39
(51)
168
(184)
スプリット180
(183)
34
(50)
161
(182)

カッコ内はMLB平均

表7 対左打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム182
(180)
35
(50)
169
(188)
2シーム181
(178)
38
(54)
166
(187)
スプリット179
(183)
34
(50)
159
(182)

カッコ内はMLB平均

各球種のカウントとゾーンの特徴

高低を上手く使った投球術

上原投手は非常に四死球が少ないことで知られています。非常にコマンド力が高く、ストライクを取るだけでなく、狙ったスポットに投球しています。

それでは細かく球種ごとにみていきます。

4シーム

基本的にどのカウントでも多く投球しています。【表8、9】

表8 対右打者へのカウント別投球割合
表9 対左打者へのカウント別投球割合

また、カウント別の球速がほぼ同じで、常に同じような質の高い4シームを投球できるといえます。【表10、11】

表10 対右打者へのカウント別球速
表11 対左打者へのカウント別球速

投球されるゾーンは高めのボール球が多いことが特徴です。ホップ成分が大きい特性を生かして空振りやフライを狙っていることが推察されます。【図3、4】

図3 対左打者へのボールの投球割合
図4 対右打者へのボールの投球割合
2シーム

ボールが先行したカウントに投球します。【表12、13】

表12 対右打者へのカウント別投球割合
表13 対左打者へのカウント別投球割合

高めを活かす投球は基本的に4シームと同じです。右打者の内角(左打者の外角)に投球が多く、それらのコースに投球する時はよりシュート気味に変化させて投球しているため、2シームと判定されているのかもしれません。【図5、6】

図5 対左打者へのボールの投球割合
図6 対右打者へのボールの投球割合
スプリット

上原投手の投球の中心で、追い込んだ後は更に投球割合が高くなります。【表14、15】

表14 対右打者へのカウント別投球割合
表15 対左打者へのカウント別投球割合

かなり高い精度で低めに制球されており、高めのストライクゾーンに失投することはほぼありません。

低めに投球することで、打者はより落差を感じるでしょう。【図7、8】

図7 対左打者へのボールの投球割合
図8 対右打者へのボールの投球割合
カットボール

右打者のみの投球で、早いカウント中心の投球です。【表16】

ゾーンは外角に徹底されています。【図9】

表16 対右打者へのカウント別投球割合
図9 対右打者へのボールの投球割合

2016年活躍の秘密

メジャーを代表するリリーバー!

ここまで上原投手の分析を行ってきました。ここで一度整理したいと思います。

上原投手はメジャーでも非常に奪三振が多い投手として知られています。上原投手は球速が速いわけでも、球種が多彩なわけでもありません。しかし、それらを補ってなお余りあるたくさんの武器を駆使しています。

まず大きな特徴として4シームのホップ成分が非常に大きいことが挙げられます。4シームが伸びるため、スプリットもより落差を感じます。

また、エクステンションが短い特徴的なフォームから、高いコマンド力で厳しいコースに投球されるため打ち崩すのは非常に困難でしょう。

ピンチで登板するリリーバーは、奪三振を奪うことが非常に重要です。様々な武器を駆使して次々と三振を奪う上原投手は、メジャーを代表するリリーバーであるといえるでしょう。

あとがき

今シーズンからシカゴ・カブスに移籍した上原投手。42歳となった今シーズンですが、デフェンディングチャンピオンのチームにあってもひと際存在感を放っています。かつてのボストンのように、シカゴのファンもその投球に魅了されてしまうに違いありません。

次回は上原投手の今シーズン(4/16現在)の投球を分析しました。ぜひご覧ください。

※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)

Baseball Geeks編集部

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